副社長のイジワルな溺愛
「……副社長にお取次ぎしましょうか。その方がきっと話は早いでしょう。お待ちくださいね」
「え、いやっ、あのっ!!」
その副社長と会いたくないから、こうして頼って来ているんですけど……。
秘書は自席から内線を鳴らしている様子だ。
私なんかが一生かけることはないだろう、副社長に。
「深里さん、通路の左奥にある副社長室へどうぞ」
にこやかに送り出された私は、不器用な笑顔を見せて背を向ける。
最悪だ……副社長付の秘書に対応してもらおうと思ってたのになぁ。
秘書室の先にある副社長室のドアの前に立つと、すり硝子になっていて柔らかい明かりが漏れていた。
軽く握った手でノックしようとするも、自然と腕が下がってしまう。
緊張しながらもう一度握り、二回叩いた。