副社長のイジワルな溺愛

 これ以上噂になるのは本当に困る。
 倉沢さんと少しずつだけど話す機会が増えてきてる気がするのに、思いも伝えないまま噂のせいで失恋するのは嫌だ。

 それに、副社長なら二人きりになっても変なことは起きないだろう。


 エレベーターの操作盤には五十六までの数字が並び、副社長がカードキーをかざして押した五十五階のボタンが消灯した。
 こんな高層階に来たのは、遠方に住む友人が都内を観光したいと言った時以来かもしれない。


「先に言っておくけど、誰でも家に招き入れるわけじゃないから、変な勘違いはしないように」
「あの、私は……」
「話があるからに決まってるだろ」

 白い大理石の通路を歩いていると、副社長が靴を脱いだ。


< 80 / 386 >

この作品をシェア

pagetop