副社長のイジワルな溺愛
これ以上噂になるのは本当に困る。
倉沢さんと少しずつだけど話す機会が増えてきてる気がするのに、思いも伝えないまま噂のせいで失恋するのは嫌だ。
それに、副社長なら二人きりになっても変なことは起きないだろう。
エレベーターの操作盤には五十六までの数字が並び、副社長がカードキーをかざして押した五十五階のボタンが消灯した。
こんな高層階に来たのは、遠方に住む友人が都内を観光したいと言った時以来かもしれない。
「先に言っておくけど、誰でも家に招き入れるわけじゃないから、変な勘違いはしないように」
「あの、私は……」
「話があるからに決まってるだろ」
白い大理石の通路を歩いていると、副社長が靴を脱いだ。