誰も知らない彼女
「……ねぇ。こうなっちゃったら仕方ないでしょ。由良が変に笑ってるの見たら、私たちじゃ止められないって」


えっ?


由良がこうなっちゃったら仕方ない?


それってどういうこと……?


疑問に思っていたことをネネに言おうとしたが、私がそれを言葉にする前に秋帆に腕を引っ張られた。


びっくりして秋帆のほうを見ると、秋帆は顔を青ざめたまま額に大粒の汗を浮かべていた。


「あ、朝丘より気持ち悪……! 気持ち悪い顔をしてる由良の近くにいたら変なウイルスがうつりそうだわ。行こ、ネネに抹里……」


心の底から由良のことを気持ち悪がっている秋帆に、本当のことなど言えるわけがなかった。


こんな顔を見せる秋帆を見たことがなかったから。


焦った様子の秋帆の目を盗んでチラッと由良の姿を視界に映す。


由良は私が離れたことにも気づかず、窓のほうを見てクスクスと笑っていた。


私には見せない不敵な笑みに、背中に虫がはうような感覚におちいる。


ゾクッとして、私まで顔を青ざめてしまいそうだ。


ねぇ、由良。


なにかあったら相談するって約束したよね?


なんでも話して秘密を隠さないって、親友になったとき言ったよね?


レストランに行った帰りに『覚悟して待ってよね』って私の拳に自分の拳をぶつけたよね?


だったらなんで私におかしくなった理由を説明してくれないの?


おかしいよ。
< 178 / 404 >

この作品をシェア

pagetop