誰も知らない彼女
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そこから若葉が嫌がらせのターゲットになったのはあっという間だった。
若葉が私を利用して騙したという噂はまたたく間に広がり、若葉は“学校一の裏切り者”というレッテルが貼られた。
誰かが彼女とすれ違えば、まるで腫れもののように避けるし、肩を強くぶつけて転ばすこともあった。
若葉サイドのクラスメイトたちは彼女を助けるのではと思ったが、噂を信じているのか無視していた。
その背景には由良と秋帆がいた。
『朝丘って、抹里に嫉妬して騙したらしいよ』
『そうそう。誰かをおとしれて自分は上に行きたいって思ってるんだよ? 最低だよね〜』
ふたりがそう言ってクラスメイトに噂を流したので、若葉は教室に入ってさっそくクラスメイト全員に白い目で見られるようになったのだ。
しかし対する若葉はというと、嫌がらせや悪口など気にもとめない様子だった。
若葉がそんな態度でいるのをいいことに、クラスメイトの何人かが若葉の体操服を外まで持っていき、それに焼却炉に入れて燃やした。
このことに若葉はようやく自分の状況を理解した。
焼却炉に若葉の姿はなかったが、クラスメイトの話で自分の持ち物を燃やされたと悟ったのだと思う。