あずゆづ。

目を、逸らされてしまうかと思っていたけれど。

ゆづくんは視線を泳がせて、少ししてから溜息をつき、もう一度こっちを見た。

自分の人差し指を立てて自分の口の前に持ってきたあと、口を横に開いて、その人差し指をそっと唇につける。



……しーっ。


―――『ぜってー言うなよ!!』



そう言われているようだった。


ねえゆづくん。

いつもは銀髪なのに、カツラは金色なんだね。


よく見るとお化粧もしてるみたいだし……。


だけど、私がずっと見てきたゆづくんの大好きな筋肉は、そのフリフリなメイド服でもごまかし切れてないよ。


どんなに綺麗に着飾って隠そうとしていたとしても。

私にとってのゆづくんは……ゆづくん。


私は、人差し指と中指を立て、にっと笑顔で返事をした。


……ピース。

―――『了解!!』



「あず? 何してんの?」


向かいの席に座っているひよりが、不思議そうに私を呼んだ。


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