あずゆづ。

私の注文するメニューを確認したゆうちゃんは、ちょうどよく近くを通った店員
さんに向かって手を挙げて注文の合図をする。

それに気づいた店員さんが、私たちのテーブルへと近づいてきてメモ帳ととボールペンを取り出し注文を聞く準備をとった。


「はい、ご注文は」


―――ん!?


「えーと、『ふわふわ白うさぎの贈り物』と『キラキラうさぎのクリームソーダ』でお願いします」


店員さんに、私の分の注文まで言ってくれたゆうちゃん。

さすがは、黒の王子。
優しい人だ。


「かしこまりました」


店員さんは、そんなゆうちゃんの注文を慣れた様子で書き取り、ぺこりと頭を下げた後奥の方へ行った。

私の分の注文まで言ってくれたゆうちゃんへお礼を言うのも忘れて。
どんどん離れて行ってしまう、さっきの店員さんから目を離すことができなかった。


「梓ちゃん?どうしたの?」

「いや……」


そんな私の様子を不思議に思ったゆうちゃんが気にして声をかけてくれるも、私はその店員さんをじっと見つめ続ける。


メイド服の袖が、あの店員さんだけ長い。

他の店員さんは肩までなのに対し、あの店員さんは手首までの長いものだ。


そして私は見逃さなかった。

……袖から見えた手の甲や、指の骨格を。


「あの店員さん……」


女性ながら、ゆづくんに匹敵する筋肉の持ち主…!?

よく見たら、体格も良さそうだ。


すごい……なにかスポーツでもされているのだろうか……。

よっぽど鍛えていないとああはならないよね……?


そして予想される筋肉の作りがどことなくゆづくんに似てる……気がする。



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