あずゆづ。
「あ、いや、大丈夫だよ大丈夫…!!
私も甘い物好きだし…!!」
黒の王子がしゅんとしてしまったものだから、私は慌てて否定した。
そんな私を見たゆうちゃんは、申し訳なさそうに眉を下げながら微笑んだ。
「本当?無理しないでな?」
いやあ、気遣いできる人だなあ本当に…。
店員さんに案内された先の席についた私たち。
まさか隣に座るわけにも行かないので、ゆうちゃんと向き合う形になっている。
ゆうちゃんは、テーブルの端に立てかけられていたメニューを手に取ると、私へと差し出してきた。
「じゃあ、梓ちゃん、メニュー選んで良いよ」
「え、ゆうちゃんは?」
「俺はもう決まってるから」
「え、どれ?」
私がそう聞けば、ゆうちゃんは少し恥ずかしそうにそのメニューを指差した。
「これ」
「えっと…『ふわふわ白うさぎの贈り物』…?」
身を乗り出してゆうちゃんが指差したメニューを見れば、ヨーグルト味をベースにしたパフェで、わたあめがもこもことついているもの。
そのメニューのすぐ隣には「おすすめだぴょん!!」とうさぎさんのイラスト付きで目立つように大きく書かれている。
この『ふわふわ白うさぎの贈り物』以外のメニューたちをざっと見て、私は、あることに気がつく。
っていうか、商品の名前が……かわいらしいものしかない……んだけど……!?
「えーっと、なになに……?『うさぎさんのお友達』に、『雪うさぎのるんるん大福』……??」
うおおお、全部おいしそうだけど注文するのが非常に恥ずかしい名前のものばかりだ……!!
「じゃあ、『キラキラうさぎのクリームソーダ』にしようかな……」
「おっけー」
迷いに迷った私は、無難な(?)クリームソーダにすることにした。
喉も渇いていたし、ちょうどいいや。