過保護な騎士団長の絶対愛
「首飾りも、耳飾りも必要ないほど、内面から出る美しさがすでに姫様を際立たせていますね」

 そんなお世辞は聞きたくない。こんな気持ちで素直に嬉しいと思えなかった。

 シンプルな淡いピンクのドレスに着替えると、サランに連れられて湯浴み室から先ほどの部屋に戻る。

「あぁ、戻ったか」

 部屋に誰かいる。

 窓際の黒い影がゆらりと揺れると、薄暗い部屋に灯されたランプの明かりが影を照らす。徐々にその全貌が現れると、ララの警戒心が一気に湧いた。


「さっぱりされたようだな、ララ様」

「……ガイル」

 この男に向ける笑顔なんてない。ララがぐっと睨みつけると、ガイルはララのそんな虚勢をあざ笑うかのようにふんと鼻をならした。そして、部屋の中央にある大きなテーブルに、形よく盛りつけられているフルーツの山から、むんずと林檎を掴み取ると、皮も剥かずに食いついた。

「シェリア王国はこのような出来のいい果物が豊富に手に入る。コルビスのように気候もいいし過ごしやすい。きっとララ様もお気に召すだろう」

「どういう意味?」

「私と婚儀を執り行い、あなたはシェリア国王の妃となるのだ」


 な、何を言っているの――?
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