過保護な騎士団長の絶対愛
「馬鹿言わないで! 私をコルビスに返して!」


 ララは堪えきれなくなった感情をガイルにぶつけるように、ガイルの胸元にしがみついた。ガイルは掴みかかられても微動だにせず、ただ冷酷にララを見下した。


「シェリア国王って何? あなたは王子でしょう?」

「国王が直々に求婚を申し込みに出向くのは不自然だろう?」

「……騙したのね」

 舞踏会のことといい、どこまで狡猾な男なのだろう。悔しくて唇を噛みしめるララを、ガイルは鼻で笑った。

「あなたのことなんて信用できない! 妃にもならないし、ここを出ていくわ」

「まぁ、そう言わずに、この国を楽しんでください。必要なものがあればすぐにでも用意させます」

「そんなのいらない!」

 すっと頬に伸ばされたガイルの手を、ララは汚らわしいものを振り払うように叩いた。

「やれやれ、コルビスの王女様はずいぶんとじゃじゃ馬のようだ」

 おどけたように眉をぴくりとあげて、手を叩かれたというのにどことなくガイルは、ララとの応酬を楽しんでいるようだった。そして、ガイルの腕が素早く伸ばされると、ララの身体を胸元へ引き寄せた。
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