過保護な騎士団長の絶対愛
「申し訳ございません。ひと時でも目を離さぬよう陛下より申し付かっておりますので」

「はぁ、そう」

 これも彼女の仕事なのだろう。ガイルの命令に従わなければあの男のことだ、なにをするかわからない。そう思うと、ララは諦めるようにため息をついた。

 ナイフでチキンを削いで、口に運ぶとカリッと香ばしい皮の風味が鼻から抜ける。

 こんな時でも美味しいって思えるなんて……不思議――。

 こんな時だからこそ味覚が研ぎ澄まされるのかもしれない。そんなことを思っていると、じっと見つめるサランの視線に気づく。

「サラン、私の前ではそんなに畏まらなくていいわ、返って心地悪いというか……」

「陛下の次期妃となられる方です。ぞんざいな扱いはできかねます」


 妃……ねぇ――。


 サランはそのように期待しているようだったが、ララにはその気はさらさらなかった。ガイルと婚儀を交わせば、それからの人生はきっと地獄のような生活だろう。


「じゃあ、せめてなにか話をしない? 私はコルビスのモリス・スイーダ・ウェインの娘。自己紹介もまだだったわね、ララ・アントリア・ウェインよ、よろしくね」

 こんなところに監禁されて、よろしくされるつもりもなかったが、なにか話でもしないと場が持たず気まずい。
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