過保護な騎士団長の絶対愛
「ララ様、そのようなお顔をされてはせっかくの美人が台無だ。 隠さないで、私はあなたの夫となる男なのだから」

「夫ですって? 冗談はやめて! い、痛い! 離して! 」

 ギリギリと手首にガイルの力が込められて、その細い腕に食い込んでいく。

「姫様、あなたも年頃の娘であるならば、もう少しおしとやかにしていただかないと。一国の王妃となる方がじゃじゃ馬では困りものだ」

「女の寝床に夜這いするような男に言われたくないわ」

 ララがぐっと睨むと、ガイルが噴き出して笑った。

「あっはは、夜這いとは……。そう見えたか? であれば夜這いということにしておこうか?」


 力をこめられた腕が一瞬緩む。ララはその隙を見逃さなかった。枕の下に隠していたカトラリーのナイフを素早く取り出すと、ララは迷いもなくガイルに突き立てるように振り下ろした。


「おっと、なかなか物騒なものをお持ちのようだ」

 しかし、ガイルはララが振り下ろすよりも早くそのナイフと取り上げ、か細い手首を捩じりあげた。

「あッ――」

 ガイルの両眼に歪んだ光が宿ると、無理やり顎を突き出させるようにララの艶やかな髪を鷲掴みにした。


「枕の下に刃物を置くなどと、あなたの世話役はとんだ教育をなさってきたようだ」

「王族なら、そのくらいの用心当り前よ」

 ガイルはいつまでも虚勢を張るララを、小馬鹿にするように笑った。
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