過保護な騎士団長の絶対愛
「お久しゅうございます。ユリウス様」

 にこりと笑うと、口元に皺ができる。若くはないが、姿勢のいい身体のラインが毅然として見える。

「お前は……サ……ラン? まさか、どうして……」

 ユリウスは目を見開いて、しばし瞬きを忘れた。

 遠い日の記憶が蘇る。かつてヴァニス王国の地下室で幽閉されていた頃、ひときわユリウスに目をかけてくれていた侍女がいた。毎日のように本の読み聞かせをし、時に勉強や作法までユリウスに教え込んだ侍女だった。


 ――こんなこと、やったって意味がない。どうせここから出られないのだから。

 ――ユリウス様、意味のないことなどございませんよ? いつかユリウス様が外へ出られ時、必ずユリウス様の助けになりますから。


「あぁ、ユリウス様……ご立派になられて……」

 サランは長年、ユリウスと一緒にヴァニスから逃げられなかったことをずっと後悔していた。涙ぐむ目元をそっと人差し指の背で拭うと、サランがいつものきりっとした表情に戻る。

 昔から肝の据わった侍女だった。クリフトから暴力を振るわれている時、抱きかかえて庇ってくれたことを思い出す。
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