過保護な騎士団長の絶対愛
 長い長い用水路の道を辿って行くと、鍵のついた門がふたりの前に立ちはだかった。

 ララが声をかけようとすると、ユリウスはすでに開錠されていることがわかっていたように素早く門の扉を開けた。さらに突き進むと、ララにとって久しぶりの外の世界が視界に飛び込んできた。

 空には星が瞬き、下弦の月が浮かんでいる。囁くような虫の鳴き声を聴くと、外に出られたのだと実感する。

「ユリウス、出られたわ!」

 その喜びもつかの間だった。外の空気を胸いっぱいに吸い込んでユリウスに振り向くと、糸の切れた人形のように地面に片手をついてユリウスが膝から崩れ落ちた。

「く……」

「ユリウス!」

 かろうじて片膝で身体を支えるが、すぐに地面に腰を落としてしまう。ユリウスは城の外壁に背中を預けるようにもたれると、息苦しそうに呻いた。

「ユリウス……」

 ユリウスの目線に合わせるようにララもしゃがみこむ。

「その茂みを行ったところに私の馬をつなげてあります。ララ様、ちゃんと馬に乗れますね?」

「どういう……こと?」

 まさか、このままひとりで逃げろって言うんじゃ――。

 しかし、今のユリウスには馬にまたがれる気力はない。ユリウスが負った傷がどんどん彼の体力を奪っていくようだった。

「大丈夫です。しばらくここで休んだらすぐにコルビスに戻ります」

「そんなこと、できない……」

 いやいやをするようにララが大きくかぶりを振ると、困ったようにユリウスがララの頭をそっと撫でた。
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