過保護な騎士団長の絶対愛
「ララ様をお守りするのが私の天命だと思っていました。ですが、やはり……私はどうやら欲深い男のようです」

「え……?」

 ユリウスは、頭を撫でるその手をララの頬に這わせ、慈しみを含んだ双眸でララを見つめた。

「私は、ララ様に秘密にしていることがたくさんあるのです。どうか、それを許してください」

 緩慢な動きで、ユリウスは自分のポケットからすっと白地に花柄のハンカチを取り出して、いつの間にか流れ出ていたララの涙をぬぐった。

 このハンカチは――。

 舞踏会の夜、腕を負傷したレオンに巻きつけたものだ。ララはこみあげてくる感情を抑えきれず、短い嗚咽をこぼした。

「知ってるわよ、もう知ってる! ユリウスがヴァニスの王族だったことも……ユリウスが、レオンだったことも……でも、ユリウスはユリウスじゃない!」

 ユリウスの手の甲をぎゅっと包み込むように握って、愛おしいその手を自分の頬を擦り付ける。ハンカチの布を通してユリウスの温かな熱がほんのり伝わると、胸が締め付けられるような切なさがこみあげてくる。

「いつも私を見て、助けてくれた。でも、もうそれだけじゃ……私だって、ユリウスを助けたい……だって、私……ユリウスのこと――」

 途切れ途切れの嗚咽の交じった声でララは言葉をつなぐ。


その時だった。
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