過保護な騎士団長の絶対愛
「ふん、ラブロマンスはもう十分に堪能したかな?」

「ッ――!」

 どこからともなく聞こえた低い男の声に、ララの身体がビクリと震える。

 まさか、こんな時に――。

 蔑視と殺意でララとユリウスの空気を打破するように、そこに現れたのは……ガイルだった。

「あぁ、お邪魔だったかな? それとも、お別れの挨拶の途中だったかな?」

 ガイルの揶揄にララが素早く向き直ると、怒りを灯した目で睨みつけた。

「お別れの挨拶? そんなわけないでしょう?」

 ララがすっと立ち上がると、ガイルがゆっくりとふたりに近づく。

 ユリウスが満身創痍の身体をゆらりと起こして立ち上がった。

「あっはは、ユリウス、さすがだな。お前のせいでほとんどの兵が使い物にならなくなってしまった」

 まさか、ユリウス……ひとりでここへ来て戦ったというの――?

 ララは驚きを隠せず、ユリウスを振り向いた。

「どうしてそんな無理を……」

 ララは両手で漏れ出る震える声を抑え込んだ。彼の視線は睨むようにガイルに注がれている。

「貴様、なぜここが……」

「正門から堂々と脱出する馬鹿はいないからな、裏口か用水路出口だと見込んできたが、俺の勘はどうやら冴えていたようだ」

 ガイルの渇いた高笑いが癪に障る。ララが前に踏み出そうとした時、ユリウスが庇うように自分の背中の後ろにララを置いた。
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