過保護な騎士団長の絶対愛
「そんなボロボロの身体でなにができる? 無駄死にする様を愛しの姫君に看取ってもらうか?」

「うるさい! 黙れ!」

「ふん、そうやって怒りを滾らせるといい」

 ガイルが剣を腰から抜くと、勢いよく切っ先をふたりに向けた。

「俺はいずれ、ヴァニス王国を復活させる。俺が王となるのだ! それにはユリウス、王族の端くれだったお前の存在が邪魔なんだよ!」

「貴様のようなやつが王だって? 笑わせるな」

「ふん、だったらわからせるまでだ!」

 怒りに理性を失ったガイルが、ユリウスめがけて剣を大きく振り上げながら突進してくる。

「く……」

 ユリウスは、瞬時にララを腕に抱き庇いながら後退してひらりと躱す。そして自らも応戦するために剣を抜いた。

「やめてユリウス! あなたが戦えば、ガイルの思う壺よ!」

 目に大粒の涙をためながらララがユリウスに懇願すると、彼はふっと優しく目を細めて言った。

「俺はあなたを置いて死んだりしない。約束だ」

 “私”ではなく、“俺”と口走るユリウスに、ララは今までない彼の姿を垣間見た。

 ユリウスの中で、すでにララは王女ではなくひとりの守るべき女になっていた。

「はっ、動きが緩慢だな、先日の舞踏会の時のような気概はどうした!?」

 ガイルが一歩一歩踏み込んで剣を振り、ユリウスを攻める。ユリウスはそれを確実に剣で受けて躱す。
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