過保護な騎士団長の絶対愛
 くそ、身体が――。

 先ほど負った怪我で思うように身体が動かない。痺れるような感覚さえ覚える。

 だめだ。ここで倒れてしまっては……誰がララ様を守るというんだ――!

「はぁぁッ!!」

 ガイルの隙をついてユリウスが渾身の力で剣を振るうと、切っ先がガイルの胸を引き裂いた。服が裂け、鮮血が走る。ガイルが怯んだ瞬間にユリウスが一気に攻め込む。

「うぐっ!」

 ガイルが背後から地面に倒れこみ、後頭部を打ち付ける。くらっと眩暈がしてガイルが振り切るように左右に素早く首を振る。そして起き上がろうと身を起こそうとした時、頬すれすれのところで鈍い光を放つユリウスの長剣がぐさりと地面を突き刺した。

「ひっ!」

 ガイルは短く悲鳴を上げる。自分を見下ろしている黒い影を、食い入るように目を見開いて凝視した。

「お前の目的は俺だけなのだろう? ならばララ様に手出ししたのは許せんな、子供じみた勝手な嫉妬で俺をあまり怒らせるな」

 ギラリと光ったユリウスの双眸が、まるでうまい獲物を目の前にし、舌舐めずりをするようにガイルを睨みつける。その気迫にガイルの表情が一瞬恐怖の色に染まる。

「覚悟しろ、ガイル」

 地面に突き刺した剣を引っこ抜き、柄を握る両手に力をこめる。

「やめて! ユリウス! 私、あなたが私の目の前で人を殺すところなんて見たくない!」

 今までの応酬を固唾を呑んで見守っていたララが、ついに堪えきれなくなって叫んだ。 その声に、ユリウスはハッとなった。

「そこまでだ。ガイル、ユリウス」
< 159 / 203 >

この作品をシェア

pagetop