過保護な騎士団長の絶対愛
「まったく、なんて顔されてるんですか」

「え……?」

「ふふ、ララ様のご命令とあらば……目を覚めさねばなりませんね」

 ふと聞こえた自分の嗚咽とは別の声に、ララはぎゅっと閉じていた目をぱっと見開く。

 い、今……なんて――?

 すると、ぴくりとも動かなかったユリウスの瞼がゆっくりと開き、自分を見上げるその双眸と視線が重なった。

「ユ、ユリウス……?」

 撃たれたはずなのに、ユリウスは徐に身を起こしてララの頬に手をあてがった。

「どういう……こと?」

 まやかしにでも騙されているかのような心地で、ララは瞬きさえ忘れてユリウスを見つめる。

「こういうことです」

 ユリウスが懐に手を入れると、ララが誕生日のプレゼントとして渡したルビカサイトの懐中時計を取り出して見せた。

「どうやら、これが私の心臓を守ってくれたようです。まぁ、かなりの衝撃は受けましたが」

 ルビカサイトはこの世で最も硬度の高い鉱石として名が知られている。

 ガイルは的確にユリウスの心臓めがけて銃弾を撃った。しかし、偶然にも内ポケットに入れておいたその懐中時計が、うまい具合に銃弾から身を防ぎ守ったのだ。
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