過保護な騎士団長の絶対愛
「心臓を狙わなければ、俺を仕留められたものを……あいつの銃の腕が返って仇となったな」

 銃弾を跳ね飛ばした懐中時計は、傷ひとつついておらず、凛と輝いていた。

「ユリウスの馬鹿! もう! もう! どれだけあなたのこと心配したか……死んでしまったかと思って、生きた心地がしなかったというのに!」

 そんな気持ちも知らず、呑気に笑みを浮かべるユリウスの胸に軽く拳をたたきつける。すると、それを優しく宥めるようにユリウスがそっとララを抱き寄せた。互いにしばらく無言で抱擁を交わし、ぬくもりを確かめ合う。

「ユリウス、あなたを失うことが怖い……」

「ララ様……」

 ララの肩が小さく震えている。いまだにユリウスが撃たれて倒れた時の光景が脳裏に焼き付いて離れない。ララは落ち着きを取り戻すとそっと身を離してユリウスを見る。

「こんな気持ち、初めてなの……だから、どう言っていいかわからなくて、ユリウスのことを考えるだけで胸がドキドキして苦しい、ユリウスが傍にいるとすごく嬉しくて馬鹿みたいにはしゃいでしまうの……愛してる、私、ユリウスのことを愛しているの」

 ユリウスに気持ちを伝えるだけで胸が締め付けられる。切なさが涙となって頬を伝う。

「ララ様は泣いてばかりだ……」

 そういいながらもその声音は柔らかくて優しい。ユリウスはそっと零れる涙を親指で拭う。

「ララ様、ひとつだけ、許していただきたいことがあります」

「許し……?」

「ララ様を心の底から愛する許しです。守護騎士としてではなく……ひとりの男として」

 ユリウスはララの頬を両手で包み込み上に向かせた。涙で濡れたララのヘーゼル色の瞳が揺れる。
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