過保護な騎士団長の絶対愛
 五年前。

 ユリウスはヴァニス国王であるクリフトと第二王妃との間に生を受けた。そして、同時期に正妃の間にも嫡男が生まれた。しかし、ユリウスは幼い頃から優秀で、何においても第一王子よりも勝っていた。それを疎ましがった正妃が権力争いを懸念し、第二王妃を国外に追放したのち、ユリウスを城の地下室へ幽閉してしまったのだ。

 それからいつが朝か夜かもわからない監獄生活が始まった。

幽閉の身とはいえ、ユリウスは正式な王位継承者であるため、侍女たちはユリウスに丁寧に接した。しかし、ユリウスにとってすべてがわざとらしく映った。

自分のことをヒソヒソと噂話をしているのも耳にした。しかし、彼にとってもはやそんなことはどうでもよかった。


身の回りにあるのは小さな埃くさい木製のベッドに本を読むための机。そして冷たい煉瓦の壁に囲われたまるで囚人のような生活だった。


唯一の明かりは机の上にあるランプに灯された蝋燭のみ。それが、ユリウスにとって太陽の代わりだった。


 ヴァニス国王であるクリフトは父親でありながら権力争いの元凶と、不遇にユリウスを扱い、時に暴力を振るった。しかし、そんな生き地獄のような毎日が突然終わりを告げた。
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