過保護な騎士団長の絶対愛
 嫌な予感がした。

その証拠にユリウスがふっと意味ありげに笑って、楽しそうにこれからララに出す問題とやらをパラパラと本をめくりながら物色している。


「そうですね、それでは、これができたらいいとしましょう」


 さっと出された問題はたった一問。ララは目の前の幾何学の図形をじっと睨んだ。


 どんな学問も彼にわからない問題などないくらいにユリウスは頭脳明晰だった。コルビスの城にも数人教師はいるが、ユリウスの足元にも及ばない。


 ララにとって幾何学は得意なほうではなかったが、嫌いではなかった。しばらくしてその問題を解答する。ユリウスはその答えをじっと眺めると、ふっと表情を和らげた。


「いいでしょう。細かいことを言えばキリがありませんが、結論から言えば正解なので……いいですか? 幾何学は自然では作りえないものを人工的に作ることで、人が計算したものを設計し、建造物を作り上げることにつながって――」


「あ~もうそういう長い話はあとで聞くから! 早く王都へ行こう!」


 最後まで話を聞かないララを相変わらずだ、と大きくため息をついてユリウスは教書を閉じた。
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