過保護な騎士団長の絶対愛
 ユリウスもまた、ララとともに王都に来ることは安らかなひと時だった。ひとりでいると、どうしても自分の過去のことや、憂鬱なことを考えがちになってしまう。しかし、ララといる時間だけは、まるでララが邪気を払いのけてくれているかのように、心が穏やかになれた。


「ララ様、あまり不注意にしていると、馬車が通りますよ」


「え? あ……」


 大道芸に気をとられていたララは、不意にユリウスに肩を引き寄せられた。人通りの多い道を大きな幌馬車が横切っていく。それが通り過ぎていくまでユリウスの大きな手が大切なものを守るかのようにララの肩を抱いていた。


「ありがとう……」


 なぜだかわからないが、ユリウスに触れられると心臓が疼く。十年もの間、ずっと一緒にいたというのに、傍にいてと言いながら近くにユリウスを感じると恥ずかしい。


 先日、あんな身近にユリウスを感じてからというもの、彼と目を合わせることができなくなってしまった。あの時、布越しに伝わってきたユリウスの熱を身体が記憶してしまったようで、今でも鮮明に思い起こされる。


 私、変だよね――。
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