過保護な騎士団長の絶対愛
 武器屋に誘われて店に入ったはいいが思いの外、興味をそそる武器が入荷していた。特に鋼の短剣はしっくりとユリウスの手に馴染んだ。ひと通り物色すると、呼びこみしてきた店主に言った。


「また後日改める。今日は連れがいるんだ」


「あのお嬢ちゃんなら、さっきスラムの方へ走って行っちまったみたいだけど……?」


「な、んだって……?」


 北へ行くとモリスも頭を悩ませるスラム街になっている。スラム街は犯罪が日常茶飯事起きているような物騒な区間だ。視察といえど、モリスがユリウスをつけるのは、誤ってララがそのような場所へ迷い込まないためでもあった。


 しまった――!


 ユリウスは目を離してしまった自分の迂闊さに苛立ちを覚え、チッと舌打ちすると、その店を飛び出した。


「これは……」


 店を出てふと視線を下に落とす。見覚えのあるトレイビーの花びらの造花が地面に一枚落ちている。ユリウスはそっとそれを拾い上げた。


 ララ様――!


 胸に嫌などす黒いモヤが広がっていく。真っ白になりかける頭を奮い立たせると、ユリウスはスラム街へ急いだ。
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