過保護な騎士団長の絶対愛
「あのガキはこの辺じゃ、有名な物乞いだよ。パパなんていやしねぇ、いつもひとりでうろうろしてる。それにここは、あんたみたいなすぐに金持ちとわかる格好した人間がくるような場所じゃねぇ」


 老人はいやらしくケタケタと小馬鹿にしたように笑った。


「この辺の人たちはみんな食べることに困っているの?」


 ララはその男に恐る恐る歩み寄る。


「あぁ、この辺に住んでるやつらはほとんどヴァニス王国から来た者だ。けど、ヴァニスと言えば、昔は侵略国家と悪い噂の絶えなかった国だ、そんなとこから来たなんて言ったら体裁悪いからな、みんな定職に就けなくて細々と暮らしてるのさ」


 昔、コルビス王国侵略に失敗したヴァニス王国は元首を失い、今は無法地帯と化して犯罪が絶えない地域になっている。ララはそんな治安から避けるために難民が各国に分散しているという噂を聞いたことがあった。


 王族が豊かな暮らしをして、国民が貧困しているなんて――。


 そんなの間違ってるわ――。


 ララの心に王族としての使命感が沸き起こる。しかし、そんなララに老人がニヤリといやらしく笑った。


「あんまり興味本意でこんなところに来たら……怖い目に遭うよ?」


「え……?」


 すると、背後から黒い影がぬっと伸びてララは瞬時に振り返った。気が付くと、いつの間にか五人ほどのいかにも柄の悪い連中に取り囲まれてしまっていた。
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