過保護な騎士団長の絶対愛
「ララ様の剣は血で汚してはいけません。あなたの汚れはすべて私がお受けします。ララ様はきっと他人に剣を振り下ろすことはできない。相手を傷つけた分、ララ様の心にも傷を負うのですよ?」


 叱咤するように言うが、それが切なく耳に流れ込んでくる。


「あなたに、そんな十字架を背負わせるようなことはさせない」


「ユリウス……」


 ララは引き離された身体にもう一度しがみつくようにして、ユリウスの胸に顔を埋めた。


「ほ、本当は……怖かった。もし、ユリウスが助けに来てくれなかったら……」


 助けてもらうばかりでは嫌だった。しかし、現にララは自分自身何も出来ない。そんな無力さに情けなさから目頭が熱くなり、大粒の涙が転げ落ちていった。


「まったく、まだまだ子供のようですね、女性がそのように簡単に涙を見せてはいけませんよ」


 伝う涙をユリウスがそっと親指で拭うと、ララの後頭部をそっと胸に抱き寄せた。


 ユリウスは温かくて、そんな打ちひしがれているララの心を優しく包み込むようだった。


 ユリウスのこともっと知りたい。もっと触れていたい。もっと――。


 今までに感じたこともない欲が、すさまじい勢いで渇望していく。


 この気持ち、なんなの――?


 ララはユリウスに抱きしめられながら、胸が疼く感覚に戸惑いを覚えた。
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