過保護な騎士団長の絶対愛
イザベルとの出会いは五年前。
夜の中心街をひとりで歩くことに、ユリウスが面白みを感じ始めていた頃だった。たまたま通りがかった人気のない道で、諜報活動中にイザベルが男に絡まれていたところを気まぐれで助けたのが始まりだった。
――私はヴァニスからの移民なの。
どこの人間だと問うと、イザベルは堂々とそう言った。
すぐにその場を立ち去るつもりだったが、ユリウスはつい足を止めてしまった。そのことをいまさら後悔しているわけではないが、自分と同じ出身の国という人間に遭遇したことは初めてで、衝撃的だった。
イザベルは、今はコルビス王国の諜報員として、モリス王に忠誠を誓う者。太陽の昇っている時間は薬師としての顔を持ち、闇にまみれると諜報員として活動をしている。ララを守護しながら、王都の内部事情も把握しておきたいユリウスは、イザベルを自身の諜報員として雇った。
金銭に困らない生活と情報を裏から入手できるという利害関係は、思いのほか均衡がとれて長続きしている。
「なんとなく、王都の雰囲気が変わってきている気がする。そう感じないか?」
その違和感は今に始まったことではなかったが、今日、ララと視察に行ってから色濃くなった。イザベルのように、ヴァニスの人間がコルビス王国に住み着く人口も年々増えてきているが、不穏という影が王都に忍び寄ってきているような、そんな感覚だった。
夜の中心街をひとりで歩くことに、ユリウスが面白みを感じ始めていた頃だった。たまたま通りがかった人気のない道で、諜報活動中にイザベルが男に絡まれていたところを気まぐれで助けたのが始まりだった。
――私はヴァニスからの移民なの。
どこの人間だと問うと、イザベルは堂々とそう言った。
すぐにその場を立ち去るつもりだったが、ユリウスはつい足を止めてしまった。そのことをいまさら後悔しているわけではないが、自分と同じ出身の国という人間に遭遇したことは初めてで、衝撃的だった。
イザベルは、今はコルビス王国の諜報員として、モリス王に忠誠を誓う者。太陽の昇っている時間は薬師としての顔を持ち、闇にまみれると諜報員として活動をしている。ララを守護しながら、王都の内部事情も把握しておきたいユリウスは、イザベルを自身の諜報員として雇った。
金銭に困らない生活と情報を裏から入手できるという利害関係は、思いのほか均衡がとれて長続きしている。
「なんとなく、王都の雰囲気が変わってきている気がする。そう感じないか?」
その違和感は今に始まったことではなかったが、今日、ララと視察に行ってから色濃くなった。イザベルのように、ヴァニスの人間がコルビス王国に住み着く人口も年々増えてきているが、不穏という影が王都に忍び寄ってきているような、そんな感覚だった。