過保護な騎士団長の絶対愛
「ユリウスよ、ここから逃げるか、我がコルビス王国の兵として新たな人生を歩むか……お前に選択肢をやろう。我々は侵略に来たのではない。城の者は何か勘違いして、すでに逃げ去ってしまったようだが……」


 モリスはユリウスの手を取り、立ち上がらせると、ふんと鼻を鳴らして腕を組んだ。


 あぁ、この人が……コルビス王国の国王なんだ――。


 新たな人生か――。


 なにもかも諦めていたユリウスにとって、それは魅力的な言葉だった。しかし、無防備に何も知らない外の世界に飛び込むのは怖かった。


「……私は外に出てもいい人間なのでしょうか?」


人として扱われてこなかった経験が、ユリウスを不安にさせた。


「そんなことは関係ない。私はお前の意志だけが聞きたい」


 自分の意思を尊重してくれるのか?と、ユリウスは信じられない気持ちでモリスを見つめた。モリスは慈愛の満ちた柔らかな笑顔をユリウスに向けた。


悪い人間ではない。そう本能が判断した。


「ここから……ここから出たい。コルビス王国の兵として」


 震える声を振り絞り、ユリウスは初めて感じる“喜び”という感情に涙した。


 久しぶりの外の世界はユリウスにとって驚異だった。そして群集と共に向かったコルビス王国で、ユリウスは天使と出会ったのだった。
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