過保護な騎士団長の絶対愛
「ふふ、そういう素直じゃないところも、変わらないのね。あなたのその歪んだ心は、きっと愛が足りないのよ」

「は……?」

 愛、だと――?

「愛することと、愛されること、あなたにはこのふたつが足りない」

「なにを言っている?」


 愛される? 俺が? 誰に――?


 まともに耳を傾けて損したような気分になる。権力争いの元凶と言われ、忌み嫌われてきた人間を、どこの誰が愛するというのだ。実の親からでさえ愛されたこともないのに。そう思うと、ユリウスは馬鹿馬鹿しい、と鼻で笑った。

「なによ、私がこんな真面目な顔で嘘でも言うと思ってるの? 失礼しちゃう」

 イザベルは機嫌を損ねて頬を膨らませると、ぷいっとそっぽを向いた。

「いや、あまりにも非現実的すぎるからな、別にお前の話が滑稽だったわけじゃな――」

「私、考えたんだけど!」


 イザベルがユリウスの言葉を遮って、いいことを考えついた、とばかりにテーブルに両手をついて身を乗り出した。


「愛が足りないからこそ! 私と愛し合わない?」

「……愚案だな」


 ユリウスが冷たく一蹴すると、イザベルはハァとため息をついて再び椅子に座り直した。

「そんなにララ王女様がいいの? 高嶺の花すぎるでしょ」
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