過保護な騎士団長の絶対愛
 高嶺の花。

ララはまさにそんな言葉が似合う人だった。だからこそ、ユリウスは己の過去が恨めしかった。

この身に変えてでも彼女を守りぬくことに、もし自分の出生が災いを与えてしまったら?

彼女を不幸へ落としてしまったら?

ララに降りかかる火の粉を振り払い、恐怖、不安、全ての邪気を濾過する存在でいたいと願うも、この手で彼女を傷つけるようなことがあったら?

と考えると、はがゆいジレンマに苛まれてしまう。

コルビル王、モリスに拾われて、国に尽くすため王に忠誠を誓うため、ユリウスは勉学に勤しみ、ありとあらゆる訓練に耐えた。そして、ララと出会い、ララを守るという天命を与えられ、生きる意味を見出したというのに。


「ララ様が羨ましいわ、こんないい男に愛されてるんだもの」

「愛……」


 自分とは縁のない言葉だ。それにララを守護することは宿命のようなものだ。しかし、それは義務なのかと言われると何か違う。


「俺に人を愛することも愛される資格もない」

「相変わらずクールねぇ……」

 イザベルは頬杖をついてハァとため息をついた。

「まぁ、この話はいっか。あ、そういえば、この前頼まれていたものができたんだった」


 イザベルが思い出したかのように立ち上がると、棚をがさがさと漁りだした。

「それが本題だろ、まったく余計な話が過ぎた」

「そう言わないでよ、あなた滅多にここに来ないんだもの」


 すると、イザベルはユリウスの前に小さな小瓶を出した。
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