過保護な騎士団長の絶対愛
「ララ様、髪飾りはこちらでご用意したものでよろしいですか?」


「え……?」


 ユリウスのことをぼんやり考えていると、ステイラが真っ赤な薔薇のついた髪飾りを持ってきた。


「いえ、それではないものにして、この髪飾りをつけて欲しいの」


「この髪飾り、ですか?」


「そうよ」


 それは先日、王都でユリウスから買ってもらったトレイビーの造花が施された金の髪飾りだった。ララはあの後、汚れてしまった白い花びらを何度も手で洗い落とし、うっすらと汚れは残ったものの、使えないほどみすぼらしくなってしまったわけではなかった。


「本当にこちらでよろしいのですか? 花びらが一枚取れてしまっているようですが……」


「えぇ、いいのよ」


 ただひとつ残念なことは、造花の花びらが一枚取れてなくなってしまったことだった。あの時、もっと冷静になって注意深く見ていれば落とさずにすんだのにと思うと未だに悔しさが蘇った。


 ダークブラウンの髪の毛を豚の毛で作ったブラシで梳かれる。髪の毛が全部引っこ抜かれてしまうのではないかと思うほど巻き上げられ、ステイラは手際よくアップにまとめていく。


「ララ様の髪は、いつみても美しゅうございますね、それに最近は肌艶もいいみたいですよ」


「そ、そう?」


 鏡の前の自分は、いたって普通に見える。
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