言葉にして
言葉
木材メーカーの会社で働いているなのかは見積書作成が終わった瞬間、壁にかけてある時計の音が鳴った。
 就業時間になったので、周りにいる社員達はやっと終わったと社員同士で話をしたり、デスクの掃除を始めたりしている。
 今日は友達の新菜(にいな)と会う約束をしているので、さっさとデスクを掃除をして、急いで帰る準備をする。

「お疲れ様」

 顔を上げると、主任が目の前に立っていた。

「主任、お疲れ様です!」
「何かあるの? 随分急いでいるわね」
「はい。約束があるんです」

 笑顔で返事をすると、主任が笑みを浮かべて耳元に近づいてきた。

「何? 今日デート?」
「ち、違います!」

 慌てて否定すると、顔が赤くなっているとからかわれた。

「これから友達に会いに行くんです」
「いいわね、楽しんで」
「はい!」

 頭を下げて挨拶をした後、会社を出て待ち合わせ場所へ急いで向かった。

「・・・・・・あれ?」

 駅の改札口を出るために階段を駆け上がると、恋人の拓人(たくと)が歩いているところを発見した。
 こちらに気づいていないので電話をかけようとすると、カラオケ店から知らない女性が拓人を追いかけて、腕に絡みついた。
 思わず視線を逸らして後ろに下がると、通行人とぶつかってしまった。
 謝罪すると彼は睨みつけて、黙って行ってしまった。
 慌てて視線を戻すと拓人と女性の姿はもうなかった。
 そのときスマートフォンの着信音が鳴り響き、電話に出た。
 待ち合わせ場所に到着したという新菜の声を聞いて、すぐそばにある公園の時計を覗き込んだ。
 今から走れば時間に間に合う。
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