王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
 金の髪の合間から見たのは、いつの間にかフレイザーの剣を払っていたウィルの背中。

 携えていた剣の鞘で、フレイザーの空いた脇腹を突いた瞬間だった。

 頼りない剣の収まっていた鞘はそれなりにしっかりとした造りだ。

 脇腹に痛みが走ったのかフレイザーの顔が歪んでいる。

 それを堪えてもう一度剣を振りかぶったフレイザー。


「ウィル……!」


 どうなるわけでもないのに咄嗟にウィルの元へ行こうとすると、マリーの身体はミケルに強く止められた。

 マリーがそばにいたときとは違い、フレイザーの重量感のある刃は、耳に響く摩擦音を立ててウィルの剣に簡単に振り払われた。

 弾かれるがままに体勢を崩したフレイザー。

 ウィルはその隙を突いて、いつかマリーが見た舞のような剣さばきでフレイザーの手元を払う。

 瞬く間もなく、フレイザーの手から剣がはたき落とされた。

 武器を失いながらも体勢を立て直そうとするフレイザー。

 ウィルの光る切っ先が、立ち直るフレイザーの喉元に突きつけられる。

 それ以上は身動きが取れなくなったフレイザーは、呼吸をも止めているように見えた。
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