王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「女に腑抜け、鍛錬を怠っている大公爵に国など執れるものか。ましてや繁栄させるどころか、国家を滅ぼしかねないだろう」


 凛々しくピンと伸ばされた背筋を見て、マリーはその勇ましさに胸を高鳴らせる。

 そして、彼の強さに守られた安堵にふにゃりと足を崩した。

 「マリーアンジュ様」と支えてくれるミケルの声は、それまでと変わらず落ち着いている。

 ウィルがフレイザーに屈することなどないと、最初からわかっていたような穏やかさだった。


「今の国政では、この先の未来など期待できん」


 フレイザーが皮肉に笑ったところで、駆けつけてきた護衛の数名に取り押さえられる。

 身動きが取れないように両腕を後ろに固められるも、フレイザーは抵抗する様子はなかった。

 ウィルはすっと剣を下ろし鞘に収める。


「そう思うのなら、職務においてその志に邁進すればよかっただろう」


 ウィルの冷静な叱咤に、ふん、と鼻で笑うフレイザーは何もかもを馬鹿にしたように言う。
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