王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「私はマリーアンジュ・イベール嬢を愛しています、心から。
 それだけは、嘘偽りのないことです」

「ウィル……っ!」


 サファイアの瞳が真っ直ぐにマリーの心を捕まえる。

 このまま彼の瞳に引き寄せられ、攫っていって欲しいとさえ思った。


「そんなことを言ってお嬢様を惑わせてるのね! イベール家の財産でも狙っているのではないの!?」


 彼の瞳に込められた真摯な想いを微塵も寄せつけず、エレンは根も葉もない疑惑をぶつけた。


「きっと私のこれまでの行動は、そう思われても仕方のないことだったと反省しています。
 ですが、エレンさん。
 どうか……マリーアンジュ嬢の幸せとお心を、一番に思って差し上げてください」


 そう言うとウィルは、胸に手を当て頭を下げる。

 そして、ゆっくりと顔を上げマリーへ視線を移すと、柔らかく目を細めて微笑んだ。
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