HARUKA~始~
第3章 高1の夏、汗と涙で縮まるキョリ
自分と他人とのキョリをどのようにして測るのか、私は知らない。

ただ、なんとなく近くなったな、とか逆に遠くなったなと感じる瞬間がある。

物理的に表したら数センチ。
いや数ミリの距離でも心理的にはより長く、あるいはより短く感じることがあるのかもしれない。

決して目には見えない“キョリ”だけど、それを強く感じる時、同時に人の心にはあらゆる感情の渦が巻き起こり、制御出来なくなる。

制御出来なくなった時、人と人との間に“変化”が現れ、その“変化”に適応出来なくなった者は、ある特定の感情に捕らわれて、もがき苦しむことになるのだろう。

私はあの夏、“キョリ”が怖かった。

縮まっては遠ざかっていく“キョリ”が怖くてたまらなかった。
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