君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
1 指名
それが謁見の間への入口だということは、一目見た瞬間にわかった。

小さい頃の記憶だろうか。

ひときわ高いドア全面には細かな金の彫刻が施され、アーチ状の天井にはイルタ王国の紋章が掲げられている。

双頭の龍が1匹。
向かい合って中央を見つめている。
右の龍は剣を携え、左の龍は月桂冠を戴いている。

右の龍はイルタ王家を表し、もう一方は教王を描いていると聞いたことがある。2頭が同じ先を見つめ、共に歩んでいくという姿を表現しているらしい。

大教会の中でも紋章が飾られ、こんな風に豪奢なドアは他になかった。ここに間違いなかった。
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