君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「今晩の件は全て極秘扱いとし、見聞きした事の口外を厳に禁ずる。いいな」
「はい」
「君は自室で待機し、万が一の場合にはうまく事を処理するように。それ以外では姿を見られないように、ひっそりと隠れていろ」
「はい……」
フィーに不安がよぎる。

万が一の場合……。
レイが犬に戻ったらという想定だろう。

人が犬になった瞬間を見て、動揺しない人など絶対にいない。そんな状況をうまくごまかせる言い訳なんて、とてもじゃないが思いつきそうにない。

「予定では21時頃にいらっしゃる。それまで、部屋で待機するように」

まだ10時間以上もあるのに、今から潜んでいたい気分だった。

何も起こりませんように。

震える指でそう祈るしかなかった。
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