君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
定刻21時。

静かな夜だった。
静寂の音だけが耳に聞こえてくる。
衣装室の隅で丸くなりながら、このまま時が過ぎてくれればと願っていた。

フィーの部屋は脱衣所という事で当然お風呂があり、その横には着替えを収納している衣装部屋があった。部屋といってもドアで区切られているわけではなく、目立たない位置にある入口をカーテンでしきっているだけだった。
レイと訪問者がいるであろう応接間とはドア一枚。悲鳴が上がればおそらく聞こえるはずだ。


話し声も何も聞こえないまま、30分が過ぎた。本当に誰か来たのだろうか。レイがいるかどうかすらもわからない。
緊張が少し緩んできた時だった。


「そちらはただの風呂場ですよ!」
ドアが開いた気配と、それにかぶさるレイの声。
誰かが部屋に入ってきたようだった。
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