君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
翌朝。

「……おはようございます」
ノックをしても反応がない部屋のドアを伺うように開ける。
ほんのすき間に顔を挟め、レイの部屋を目視する。

誰もいない。
女性は帰ったようだった。

閉めっぱなしのカーテンを勢いよく引っ張る。昨晩の憂さが晴れるようなさわやかな陽光が差し込んできた。

「……んーー……」
ベッドから眠そうな声が上がる。
珍しく寝坊をしたようだった。

「おはようございます、レイ様」

寝ぼけながら体を起こし、
「……おはよう」
返事をする。

下半身はどうだかわからないが、上半身は裸だった。
昨夜の余情が伝わってきて、反応に困ってしまう。なんとなく直視するのもはばかられた。

こんな時に限って、レイは普段の軽口を叩いてくれない。
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