君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「予知夢は犬の時にしか見ないから、寝る時は元の姿に戻るようにしてる。だから、人間の服は着てられないんだ」

至極もっともな発言だった。

「未来の見方は人それぞれなんだけど。おれとナナカは夢で知る」
「ナナカ?」
初めて聞く名前だった。

「もう一人の教王」
「あ!!」

その存在をうっかり忘れそうになるほど謎に包まれているもう一人の教王。
教王庁内で誰一人としてその事を口にする者はいない。タブーというより、そもそも知られてすらいないのではないだろうか。

「当然だろ。カドラスですらよくは知らない。会ったことないし。未だにナナカの所在すらつかめてないんだから」
「どちらにいらっしゃるのですか?」
「ナナカは旅芸人の一族だから。世界中をあちこち旅して回ってるらしい」

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