君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
「おそらく、昼食の中毒症状だろう。あとは任せる」
「はい」
後ろに控える男性に一言だけ指示を残し、カドラスは退室しようとしている。

(どうして!? どこへ行かれるの?)

見捨てられた気がした。彼の生死に興味はないといった行動に思えた。

「カドラス様! レイ様をお救いください!」
視界がぼやけて、カドラスの姿をうまく捕らえられない。
「私がいてもしょうがあるまい? 彼に無理なら誰がやっても同じことだ」
会話をする気もないらしく、早々に退室してしまった。

レイをなで続けている手の動きが止まる。
何も考えられない。
どうしよう。どうしたら。

「泣いている場合ではありませんよ、お嬢さん」
その見た目と比べて、思いのほか軽妙な口調でその男性は近づいて来た。

「私はレン君の主治医です。どんな姿でも治してみせますよ」





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