君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
医師の言葉に安堵と共に疑問が生じる。

「先生はレイ様をご存知なんですか?」
今回の件よりもずっと前から。

「私はアデラ様の主治医でした。なので、レイ君のことはよく知っています。彼がここに来た時からの付き合いです」
レイの出生については初耳のことばかりだった。

「レイ君は元々、野山で暮らす野良犬でした。たまたま、狩りを見学しに来ていたアデラ様が見つけたそうです。母犬は数日前に死んだらしく、その遺骸の周りに3匹の子犬が寄り添うように寝ていたとか」
「そのうちの1匹がレイ様……」
「衰弱していたため全員を治療したのですが、回復したのはレイ君一人でした。……まさかその子が成長して教王様になるとは。これだから、運命はおもしろい」
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