いじめっ子には愛の鉄槌を
ぽかーんとしているあたしに、鮎川さんが教えてくれる。
「今井君、来月から三年間、シンガポールに駐在なのよ」
「え……」
ちょっと待って……
どういうこと?
淳太君、ここからいなくなるってこと?
同居も解消ってこと!?
「あー……まだ藤井には言っていなかったな」
淳太君は興味なさそうに言う。
そんな淳太君にかける言葉が見つからなかった。
淳太君がいなくなるなんて幸運なことだ。
仕事にも集中出来るし、下僕も解消だ。
おまけに、あの家はあたしだけのものになる。
この際淳太君なんて諦めて、また新しい恋を探すべきだろう。
こんなに嬉しいことはないのに、胸が張り裂けそうに痛い。
突然の出来事に涙さえ出ず、ただ震えていた。