いじめっ子には愛の鉄槌を
「それにしても、淳太君のものがなくなると部屋が広いね」
「だな。ようやくお前の城だな」
そんなこと言わないで欲しい。
淳太君がいての、この家なのに。
初めはあんなに嫌だった同居だが、今は残された僅かな時間がたまらなく愛しい。
そして皮肉なことに、この状況になって初めて淳太君と日常会話をして笑っている。
それはまるで恋人や夫婦みたいで、温かくて尊い時間だった。
「淳太君ならシンガポールでも上手くやっていけるよ」
「だろ?俺もそう思う」
「そういう図太いところ、鬱陶しい」
「鬱陶しいって……のび華のくせに!」
二人で冗談を言って笑い合う。
こんなに幸せな時間があるなら、はじめから抵抗なんてしなければ良かった。
もっともっと淳太君と笑い合えば良かった。