いじめっ子には愛の鉄槌を
渡部さんは、少し遠慮がちにあたしに言う。
「藤井さん、同じ部署同士よろしくね。
あたし、先輩たちと上手く出来るかどうか……」
なんで渡部さんがそんな心配をするのだろう。
今日だってぽつんとしていたあたしとは違い、同じ新人の新城君とも話していたし、先輩たちも積極的に渡部さんに話しかけていた。
渡部さんは配属されてすぐにヒロインになってしまったのだ。
そんな渡部さんがすごく羨ましい。
あたしだって、出来ることなら渡部さんみたいになりたい。
社会人デビューするために、この会社に就職したのだから。
だから明日からは……
そう思った自分に愕然とした。
あたしはいつも、「明日からは」と先延ばしにして、のび華のまま二十二年間を過ごしてきたのだ。
これ以上先延ばしにしてはいけない。
あたしも、渡部さんみたいな素敵女子になりたいんだ。
「あの……渡部さん」
震える声で彼女に言う。
「あたしも……お洒落、したいんです」