いじめっ子には愛の鉄槌を



梨乃は大きな瞳であたしを見て言う。




「桃華はもとから綺麗な顔してるけど、メイクの魔法はすごいんだよ」




あたしってもとから綺麗な顔なの!?

そんなことも分からないあたしは、あれよあれよと素敵なお姉さんにメイクされ、鏡の向こうにはリア充のあたしが映っていた。





「ね!すごいでしょ。

桃華すごく可愛い」




梨乃は嬉しそうに言う。




「だからあたし、化粧品会社に就職出来てすごく嬉しいんだ!」






梨乃はすごいと思う。

メイクが好きだから化粧品会社に就職したという、立派な動機があるから。

それに対してあたしは、社会人デビューするためという邪な目標しか持っていなかった。

そしてその目標はすでに達成されようとしている。

そんなふざけた目的を持って就職したあたしに天罰が下るのは当然で……

家でも会社でも淳太君に会わないといけないと思うと、心が重くなるのだった。



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