恋する病棟、24時










むくりと体を起こすと私は周りを見渡した。時刻は朝の7時を少し回ったぐらい。周りの風景はいつもの私の部屋だった。
ここ数時間の記憶がない。全くというわけではないが、どうやって自分の家まで帰ってきたのか分からないのだ。


「うわ、昨日の服のまま寝てた!」


昨日は同僚たちと久々の飲み会だったので少し羽目を外してしまった感がある。
やっちゃったなー、と反省していると不意にとある記憶だけが蘇ってきた。


『付き合いましょうか?』


氷川先生……あれは夢? だって飲み会に氷川先生は参加していなかったはず。
夢なら相当恥ずかしい夢だ。病棟のアイドル的存在である氷川先生が私に「付き合いましょうか」なんて言うわけがない。しかし夢だとしてもああ言われたことはいい思い出な気がする。

って、準備しなきゃ遅刻する。そう慌ててスマホの電源を付けたその瞬間、私の目にとあるメッセージが移り込んできた。


【昨日は無事に家に帰れたでしょうか。二日酔いには気を付けて】

【交際の件、宜しくお願いします】


それはいつ連絡先を交換したのか分からない、氷川先生からのLINEのメッセージだった。
二つ目のメッセージの「交際」と言う文字から目が離せない私は思わず動揺してスマホをベッドの上に落とす。

ま、まさか! 嘘でしょ!


「夢じゃ、ない……」


私、あの氷川先生と付き合うことになってる!




< 3 / 35 >

この作品をシェア

pagetop