恋する病棟、24時
彼女はハッとした顔になると「えへへ」と照れたように笑う。
「見られてましたか。でももう大丈夫です。私、仕事で泣くのはもうやめるって決めましたので」
「そうなんですか?」
「はい、自分が泣くところとか弱いところとか人にも自分にも見せたくないって思って」
だから大丈夫です!、という彼女は半分は本音で半分は空元気のように思えた。だけど彼女がそう言うなら俺には関係ないことだと思う。
「そうですか、分かりました」
「はい、ご心配かけました。お仕事戻ります!」
そう言って俺の横を通っていく彼女を振り返る。強い子だな、と思う。自分一人で立ち直れることな越したことはないから。
だけどその分脆い子だなとも思った。自分にも弱いところを見せないとなると、それは見て見ぬ振りになる。そんなの長続きしないだろう。
言葉通り、潰れなければいいけれど。
「(笑顔なのはいいけれど、だけど泣いちゃいけないってわけじゃない)」
彼女の涙を見て少なからずは心を動かされた人間がいるのだから。
彼女の泣いた姿ですら、受け入れる人がいればいい。
そう、誰かが。
『自分が泣くところとか弱いところを人にも自分にも見せたくないって思って』
俺が、そう思ったから。
だから
「うぅ、氷川先生と付き合いたいなぁー」
彼女が泣くところを、
君の弱いところを、
見せて、俺だけに、
「いいですよ、付き合いますか?」
俺が愛してみせるから。


