恋する病棟、24時
「(出来たらでいいって言ってたし)」
午後からの検査の準備をしようと歩き出し、二つ目の角を曲がろうとしたその時。
視界の先に捉えた姿を見て足が止まってしまった。
白い壁の方を向いて人にバレないように涙をこらえている彼女。あぁ、思い出した。彼女が西原さんだ。
どうしよう。見つけてしまった。となれば塩野の言うように慰めなければいけないのだろうか。
しかしこういうのは一人で立ち直ることに意味があって。
『こういうことで新人潰したくないよな』
そんな塩野の言葉が頭を過る。
少し、声を掛けるだけなら出来るかもしれない。
と、
「うわぁっ!」
「っ……」
足を踏み出そうとした瞬間にぶつかってきたのは西原さんだった。彼女はもう立ち直ったのか、少し目が赤いだけで涙の跡は残っていない。
「ひ、ひひひ氷川先生! 前見てなくてすみません!」
西原さんは驚いた声で俺を見上げる。
「大丈夫ですか?」
「は、はい! むしろ氷川先生が怪我してないかなって」
「そうじゃなくて……」