BAD & BAD【Ⅰ】
録音レコーダーに伸ばされていた剛の手が、静かに下ろされていく。
グッと握り締められた剛の拳が、真実を物語っていた。
自分で『裏切り者』と手紙に書き残し、神雷を裏切ったように見せた剛が本当に裏切っていたのは、不良撲滅計画に自分を利用する首長側だった。
いわば、2重の裏切り。
けれど。
最初に気づいてほしかったのは、私ではなく神雷の皆……たかやん達だったのだろう。
苦しがっているのがバレバレだ。
わがままだね、剛は。
独りで抱え込んでるところも、たかやんにそっくりだ。
既に行動を起こしていたのは、たかやんよりえらいけど。
「あのさ、これ意味ないと思うよ?」
「え?」
「ガキ相手なら通用すると思うけど、相手は大人……それも首長だよ?いくらでも言い訳できるし、子どもの行き過ぎたイタズラとして片付けられる可能性もある」
剛が瞳を揺らしながら、「確かに」と呟く。